2002年1月
藤井 武(TBMプロデューサー)
J-Jazz、J-ClassicのJ-Pops化を憂う

 J-Jazz、J-Classicとは、言葉としても嫌いですが、ジャズやクラシックといった少数ファンに支えられている業界を少しでも活性化するために有効ならその呼び名を受け入れることに不満はありません。

   メジャー・レーベルは所帯が大きいから、売上げ至上主義になるのは当然です。しかしながら、アーティストの特性や意志にお構いなく「売れ線企画」で制作していく傾向が最近は特に目に余ります。宣伝費やプロモーションに費用をかけたのだから、売れるうちに売ってしまえ、あとはそのアーティストがつぶれようがどうしようが知ったことじゃない、という本音が見え隠れするのです。私は、「売れ線企画」はマーケットの大きなJ-Popsの分野だけにしてもらいたいと切に願うものです。更に、J-Jazz、J-Classicでの「売れ線企画」は、そのアルバムを購入するホンモノのジャズ・ファン、クラシック・ファンに、「またダマされた」という大きな失望を与え、小さなマーケットをますますおかしくしてしまうという悪影響が出ています。

 マーケットの大小により、制作・販売への姿勢をキチンとすることが最も大切なことなのです。ジャズやクラシックとJ-Popsは違うのです。

 具体例をあげます。Akikoです。石井明子としておととし(2000年)ライヴ・シーンでは人気を集め始めていました。私も大変気に入っておととし初夏から暮にかけて何度も聴きに行ったものです。私の過去32年の経験の中で、20才代前半でジャズ歌手としての豊かな才能を感じさせてくれたのは、笠井紀美子、中本マリに次いで3人目の大物候補として高く評価し見守っていたつもりだから、石井明子の良いところ、足らざるところをよく知っています。

 さて、アルバム「ガール・トーク/Akiko」です。デビュー作をパリ録音と、鳴り物入りの宣伝だったから、ある程度予想はできたものの、正直これほどヒドいアルバム作りとは思わなかった。石井明子の良いところほとんど出ていない、というより、プロデュースの方向に無理やり合わせさせられて痛々しいほどだった。恐らくプロデュースのアンリ・ルノーは、事前にカセットか何かで何曲か聴いただけだろうし、マニュエル・ロシュマン以下のミュージシャンとも、スタジオで初めて顔を合わせたかのようだ。

 普通はデビュー・アルバムを聴けば、そのアーティストの全貌とまではいかなくとも、核心の部分は感じとれるはずだが、これではジャズの制作とはいえないのです。

 酷評になったが、石井明子の才能を惜しむが故の苦言ととって頂きたい。


[TOP MENU]
tbm0802@tvz.com
Tokyo Virtual Zone
Copyright 1996 Miura Printing Corporation