伝統技法を結集した、洋蘭十二点の木版画集。 蘭花譜

洋蘭に生涯をかけた加賀正太郎の美意識、ここに復活。
蘭花譜
特別限定100部
税込 577,500(本体 550,000円)[別途送料が必要となります]
全12点 布製帙箱入り 額1枚・解説書付
摺法:手摺木版画、画寸法:約45.2×30.0cm、マット寸法:60.6×45.4cm
用紙:越前生漉き奉書<人間国宝 九代目岩野市兵衛漉元>
※復刻版ではありません。当時の版木からの再摺版です。
※額付きですので、季節によって差し替えてお楽しみいただけます。

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趣味人、加賀正太郎の審美眼が創り上げた木版画の傑作。それが「蘭花譜」。
自然を愛し美を追究する稀有な趣味人であった関西の実業家、加賀正太郎(明治21年〜昭和29年)は若き日の欧州歴遊で洋蘭と運命的に出会い、その美しさに強く感銘し、26歳の時に自らの手で洋蘭栽培を始めました。しかしながら洋蘭の栽培は非常に難しく当初は数々の失敗を繰り返すばかりでしたが、加賀正太郎の情熱はその困難に屈することはなく、さらに莫大な資産を投じて京都の大山崎に英国風の山荘を建設。その上、新宿御苑に勤務していた”洋蘭の神様”とも呼ばれる後藤兼吉をこの大山崎山荘に招き入れました。こうして加賀・後藤両氏の手で本格的な洋蘭栽培が始まり、日本における洋蘭栽培の礎となりました。

加賀正太郎は、洋蘭の栽培のみならず交配による品種改良に没頭し、新品種を次々を誕生させ、大山崎は名実共に日本の洋蘭のメッカとなりました。そして自らが生んだ美しい良花を後世に残すために、優良種104種を手摺彩色の木版画とカラー図版・単色写真図版で再現させた版画集を自費出版しました。これが”日本の蘭の彩色図譜”の傑作と称えられた昭和の『蘭花譜』です。

太平洋戦争直前まで10年近くかけて製作された昭和の『蘭花譜』は昭和21年に300部限定で刊行、100部は海外の大学・植物園に寄贈、200部は国内の研究者や好事家に市販したいと記録されています。とりわけ83点にも及ぶ木版画の制作には彫師、摺師ともに最高の技術者が選任され、膨大な時間と費用が投じられ、他に類を見ない見事な出来栄えは、海外からも絶大な評価を受けました。現代に於いて同様の図譜を木版画で製作するのは至難とされていましたが、このたび版木12点が発見されたことで平成の世に『蘭花譜』が蘇りました。
洋蘭栽培のメッカともなった大山崎山荘 (アサヒビール大山崎山荘美術館) 大山崎山荘内部 (アサヒビール大山崎山荘美術館) 現存する稀少な昭和の「蘭花譜」


平成の世に「蘭花譜」を蘇らせた匠
最高の手仕事と膨大な時間を投じて、眠りから覚めた平成の「蘭花譜」。
加賀正太郎が亡くなって半世紀。昭和21年に刊行された『蘭花譜』の解説書には、後年に機会があるなら、この版木を使い、「優良な摺師と絵の具と紙を得て」再摺りをしたいとの希望が記されていましたが、大山崎山荘にあったはずの版木は一枚も残存していませんでした。ところが、近年になって当時の版木12点の主版と色板一式の存在が判明しました。その事実は高く評価され、当時と同様の木版画を摺り上げる事業が計画されました。そして、美術印刷の老舗である三浦印刷、三浦久司会長の協力を得て『蘭花譜』再摺作業が本格的に始まりました。

このたびの再摺作業で、欠けた線や傷んだ箇所の「彫り足し」や「埋め木」などの補刻を請け負った京都の彫師・松田俊蔵は、当時の名人彫師・菊田幸次郎や三台目大倉半兵衛が彫った版木の鋭い刀の流れや絶妙な仕上がりを見るだけでも冥利につきると語っています。
人間国宝である、九代目岩野市兵衛に依頼した最高級の手漉き紙を使用。
当時、加賀正太郎は職人の手間賃を惜しむことなく、最高の紙と顔料を使わせていました。再摺事業での紙も、当時と同様の「天王山 大山崎山荘」の透かし文字が入った福井県今立町の手透き越前奉書が必要で、人間国宝である紙漉き職人、九代目岩野市兵衛に製作を依頼しています。岩野市兵衛は画の生命を損なわないように、丁寧な「チリ取り」された紙を漉くことで定評があり、父である八代目も昭和の『蘭花譜』の紙を漉いています。
8人の熟練摺師が、技のすべてを注ぎ込んだ摺りの芸術が再びここに。
『蘭花譜』は学術上重要な植物品種の記録であると同時に、木版画という伝統技術と植物図譜が一体となった貴重な画集です。今回の再摺では、昭和の『蘭花譜』を手がけた上杉桂一郎の長男、上杉猛をはじめとする8人の摺師が京都から選任されました。この再摺12版には原画が現存せず、昭和の摺り物を見本に、当時の摺りの際に版木に残った絵具からの最初の色遣いを推測し、高度なボカシの技を駆使し、肉筆さながらの立体感ある写実性を見事に再現しています。今回、限定100部で蘇ったこの摺りの芸術は、観る人の心を魅了する逸品と言えるでしょう。



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