「ワイン道」楽々講座

WINE WINE
城丸 悟
エッセイスト
ワイン研究家(フランス・ラングドック地方ジョワイユーズ公爵位受章)
F・I・E・V(国際ワイン・ジャーナリスト&ワイン評論家会議)会員
横須賀市民文化財団理事


はじめに
 近頃ワイン・ブームとやらで、ワインを飲んだり語ったりする人々がにわかに増え、ソムリエは 花形職業にまつり上げられて、短期間ワイン・スクールへ通っただけでいっぱしのソムリエに なったような気分になっている者がウジャウジャしています。
 しかし、何千年も前に初めてワインなるものを知った人々が喜びにうちふるえて夢中になった 頃を除けば、そもそもワイン・ブームなどという現象は日本と二、三の国以外、世界的にはない のです。長い歴史を通して、西欧ではワインは食卓に欠かせないものですし、信仰上はキリ ストの血の象徴であり、医学的にもその薬効が重んじられているという日常生活の必需品で すから、改めてブームになるわけはなく、人々はごく当たり前にワインに親しんできたのです。 ですから西欧の人々は、高級ワインの味わいから並ワインの良さまで、それぞれにワインの味 がわかっています。
 ところが日本には生活の中でワインに親しむ習慣はまずなかったために、ワインとはどんな飲 みもので、その基本となるワインそのものの味や香りはどんなものなのか、何を基準にしてワイ ンの良し悪しを判断すべきか、という経験から来る評価が下せない人がほとんどです。その ために、ただ口当りが良く、何となく飲みやすく仕上げてあるワインをいいワインだと思ってしまったり、 ブランドものに弱い傾向を丸出しにして、名の通った高級ワインに憧れてはファッション感覚で それを飲み、やたら得意になってカッコをつけたりしています。まだまだ日本人の多くは、ワイン を飲んではいるものの、その飲み方はどこか頼りないのです。  たとえば、あなたはレストランで食事をする時にワインを注文し、ソムリエが味見のために最初 に注いでくれるワインを一口飲んではみるものの、良いワインかダメになっているワインかの判 断が出来かねて、仕方なく「結構です」とお世辞笑い半分のOKを出すことはありませんか。 誰かにお祝いやお歳暮などの贈りものとしてワインを選ぶことにし、デパートのワイン売場で 「赤白二本で○○円ぐらいの軽くて飲みやすいワインを適当に詰め合わせて下さい」などと 店員まかせに頼んだことはありませんか。反対に誰かからワインを贈られて、それがどの程度 のものかわからず、困ったことはないでしょうか。贈られたワインの価値がわからなければ、贈 ってくれた人の気持ちを汲むことなど出来ないはずです。これらの例のように、あいまいで頼 りない態度をせざるを得ないのは、ワインの知識がいいかげんだからです。
 そこでこのさい、しっかりとワインについて覚えてしまおうではありませんか。めんどうですが難 しくなく、なるべく親しみやすく覚えやすい方法で、これからワインについて書いていこうと思 います。ただしこの講座の目的はあなたをワイン通にすることではありません。
 なぜなら本当のワイン通という人たちは、たぶん世界中にごくごくわずかしかいないからです。 フランスはボルドー地方だけでもざっと数千ものワインを産むシャトーがあり、イタリアには一万 二千以上のワインの銘柄があり、ドイツにもスペインにも、アメリカにもチリにも、アルゼンチン、 アフリカ、オーストラリアはじめワイン産出国それぞれに予想をはるかに超える数の銘柄があっ て、それらを合計すると五万やそこいらのそれぞれ異なったワインがひしめいています。それ らをすべて飲むことなど不可能なことは明らかで、かなりのワイン通や専門家でも、そのごくわ ずかしか飲んでいず、従ってオールマイティなワイン通なぞ存在しないのです。
 ですから、これからのべていくことは、この講座を通して、いろいろな人に自分たちの知識で自分の愛せるワインを発見していただくことが目的です。ごまかされずに、ワインを選べるようになっていただくことが狙いです。

※さて、いよいよ次回は、エティケット(ラベル)のお話です。ご期待ください。


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