「おくのほそ道」をたどる
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![]() 写真と文:上野信好 |
(小松・多太神社) 7月15日金沢に到着した芭蕉は9日目の24日、小松へと移動しています。 「しおらしき 名や小松吹く 萩すすき」 句意は、小松という地名のゆかしさと折から吹いている秋風に、萩やすすきとともに そこかしこに生えている小松までもなびいていて心がなごむ・・・という意味で、こ の句には芭蕉文芸で確立された「わび」と「さび」が詠み込まれた句としても知られ ています。 「わび」と「さび」は本質的には同義語ですが、小松とはなんと愛らしい地名である ことよ、という実生活上の感情を「わび」、そして萩すすきとともに小松までも吹く 風になびいていて旅心をなごませてくれる、というこの場合の小松の様子は俳詩独特 のニュアンスでこれを「さび」と言っています。言いかえると俳句の醸し出す色調や 持ち味を「さび」という訳ですが、「わび」と「さび」の厳密な識別はむづかしいよ うです。
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