愛の妙薬
 
愛の妙薬(L'Elisir d'Amore)
第一幕第一場
 
 ここは北スペインのバスク地方にあるとある農村。野良仕事の合間に村人達が憩いの時間を持っています。地主の娘アディーナは木陰で本を読んでいます。彼女に憧れているネモリーノは、自分と違って頭も良く美しい彼女の姿に溜息をつきながら歌います(アリア「なんて美しいんだろう、なんて可愛いんだろう」)。
 
 突然アディーナが、本の内容が面白いと言って笑いだします。そして字の読めない村人達にせがまれて彼女は本を読んで聴かせます(アリア「無情なイゾルデ姫に」)。それはいにしえのトリスタンとイゾルデの伝説で、惚れ薬の効き目で永遠の愛で結ばれた二人の物語でした。皆は、こんな薬があったら素敵ね、と口々に笑いあいます。
 
 そこに小太鼓の音とともに地方守備隊がやって来ます。隊長の軍曹ベルコーレは、早速美しいアディーナに目をつけてきざな口調で口説きはじめるのです(アリア「昔パリスがしたように」)。プライドの高い彼女は、まんざらでもない様子ではありますがそう簡単には陥落しません。ベルコーレは守備隊を休ませるため、農場の中に入って行き、村人達もそれぞれの仕事に戻っていきます。
 
 今の様子を見ていたネモリーノは気が気ではありません。彼はアディーナを呼び止め、おずおずと愛の言葉を口にします。内心彼を少しばかり好もしく思っているアディーナですが、「私は気紛れでくるくると気が変わるの」とあまりにも純朴で野暮なネモリーノをあしらって去っていくのでした(二重唱「そよ風にきけば」)。
 
愛の妙薬
▲'97.8.28 第四回イタリアオペラツアーより
 
第一幕第二場
 
 広場にラッパの音が鳴り響き、いかさま薬売りのドゥルカマーラが現れます。彼は高名な医者と偽って村々を廻り、偽の薬を売り付けて歩いているのです。ここでも集まってきた村人達に彼はもっともらしい口上を述べ、やれ肌がきれいになるの、やれ若返るのとうまいことを言うのです(アリア「お聞きあれ、村の衆」)。無知な村人達は最初は怪しんでいたものの次第に彼の口調に引き込まれ、我先にと薬を買い求めて帰っていきます。
 
 そこへネモリーノが現れ、おずおずとイゾルデ姫の惚れ薬はありませんかと聞きます。ドゥルカマーラは安ワインを惚れ薬と偽って売り付けますが、もちろんそうとは知らないネモリーノは大喜び。ドゥルカマーラはあまりの彼の無知にあきれながら、一日経てば効き目が出ると教えます。いかさまだったと気付いたときにはもう旅立った後ということになるわけです(二重唱「ありがとう!本当にありがとう!」)。
 
 一人になったネモリーノは早速この薬を飲みます。中身はワインですから、彼は少々酔っ払い、いい気分ですっかり気が大きくなります。そこに現れたアディーナは、さっきとはうって変わった彼の様子に心底驚きます。ネモリーノの方は、明日になれば彼女は自分に惚れると思っているのですからすっかり大胆になり、まるで彼女に気のないようなそぶりを見せるのです。しかしこの態度はアディーナのプライドをひどく傷つけて、彼女を怒らせてしまうのでした。
 
 そこへ再び現れたベルコーレが、明日出発しなくてはならないから今日中に自分と結婚して欲しいとアディーナに迫ると、ネモリーノに当て付けるつもりの彼女はそれを承知してしまいます。ネモリーノは大慌て。何とか一日待ってくれと騒ぎだしますが、彼の慌てるわけが分からない村人一同は彼を嘲笑し、婚礼の祝宴の喜びに沸き返るのでした。
 
 
第一幕/ 第二幕
 

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