![]() 写真と文:上野信好 |
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平泉 『三代の栄耀一睡の中にして、大門の跡は一里こなたにあり。秀衡が跡は田野になりて、金鶏山のみ形を残す。まづ高館に登れば、北上川、南部より流るる大河なり。衣川は和泉が城を巡りて、高館の下にして大河に落ち入る。泰衡らが旧跡は、衣が関を隔てて南部口をさし固め、夷を防ぐと見えたり。さても義臣すぐってこの城にこもり、功名一時の叢(クサムラ)となる。「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と笠うち敷きて、時の移るまで涙を落としはべりぬ。 「夏草や 兵どもが 夢の跡」「卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな」曾良』 紀行文ハイライトの一節を改めて書き出しましたが、「おくのほそ道」2万数千字の中で芭蕉がもっとも表現に技巧をこらし、絶唱した部分がこの211文字であります。 この章の舞台は義経主從終焉の地高舘(タカダチ)でありました。時代は芭蕉が訪れた時からちょうど500年遡る文治3年(1187年)のことでした。兄頼朝から逃れ、少年期に藤原秀衡に育てられた平泉に再び舞い戻った義経主從を秀衡は暖かく迎え入れます。
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