写真と文:上野信好 |
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にご用意下さって画面と対比しながらご覧いただくことをおすすめします。 「新訂おくのほそ道」 潁原退蔵・尾形仂訳注・・・角川文庫 ¥620 |
中央分水嶺越え・・・出羽路へ (出羽路へ)松島、平泉とこの旅の大きな目標とした地を尋ねた芭蕉は、高館から踵 を返して出羽路へと旅をすすめます。その先にはもうひとつの目的地象潟があった のでした。そもそも、芭蕉と曾良の旅の計画が平泉からさらに北をめざすものであったのか、そ れとも紀行文に書かれた出羽から北陸道(ホクロクドウ)と、はじめから決められて いたかはさだかではありません。僅かに高館の条で、芭蕉がこの山城から北方の衣川の柵あたりを眺望し、500年前の 悲劇に思いを馳せ涙を落としたという文脈から、みちのくの旅の北限が高館であった と想像するのが素直なことかもしれません。 紀行文「おくのほそ道」が成立したのは、この旅から帰ってきて4〜5年先のことでし た。 紀行文はフィクションが多く純粋に文学作品として鑑賞すべきものであること、発端 の章で旅についての根本概念に触れ、旅こそ人生そのものであること、行方さだめぬ 漂泊の旅を重ねたことなどを考え合わせると余計な詮索は無用というものかもしれま せん。しかし実際は事前に周到な調査と準備がなされ、情報をもとに旅を続けて行っ たことは曾良の随行日記などから知ることができます。
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