![]() 写真と文:上野信好 |
『高山森々として一鳥声聞かず。木の下闇(シタヤミ)茂り合いて夜行くがごとし。雲端につちふ る心地して、篠の中踏み分け踏み分け、水を渡り、岩に躓(ツマズ)いて、肌に冷た き汗を流して、最上の庄に出づ。かの案内せし男のいふやう、「この道必ず不用のこ とあり。恙(ツツガ)なう送りまいらせて、仕合はせしたり」と、喜びて別れぬ。後 に聞きてさへ、胸とどろくのみなり。』 (尾花沢)5月17日昼すぎに芭蕉らは尾花沢に鈴木清風を尋ね、26日まで10間もの 長逗留となりました。清風は土地の名産紅花を江戸や上方にあきなふ豪商で当時広く知られた人物でありま した。芭蕉が清風を詩作の弟子として心許したのは、彼が単なる富豪ではなく、資質の清らかさと学問が好きな点にあったと思われます。
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