江戸・東京を往来して探る 実用便利帳
江戸の便利帳【壱】
江戸の実用品(手紙)「矢立」

絵と文:三輪映子【拡大】

携帯用の硯箱、長さは大人の手のひらほど。 柄の部分に小さい筆をおさめ、 蓋つきの墨壺には、墨汁をしみこませたもぐさを詰めてあります。
「矢立」という名の由来は、鎌倉時代、武士が箙(えびら=矢を入れて背 負う道具)に入れて陣中に携帯したこと。 江戸時代には、腰に下げて歩くように工夫され、旅の必需品となりました。 また、男性のおしゃれの小道具を兼ね、蒔絵などを施した贅沢なものも作られました。

実用的なものは今でも作られており、書画の材料を扱う店で買えます。 最近の絵手紙ブームで、矢立が復活、 和紙の葉書に矢立でさらりと描いたスケッチ、なかなかいい味です。

 

●実用便利帳

生活の中からどんどん季節感が失われているのに、手紙はやっぱり時候の挨拶からはじめたい。というのも、季節の変化に敏感だったご先祖様の感覚が、我々のDNAに刻まれている?そこで、現代の暮らしにも通用する時候の挨拶を考えてみました。

五月(皐月)
葉桜の頃
緑したたる季節
青空に鯉のぼりが鮮やかな季節
新緑の頃
野も山もいっぱいの新緑

六月(水無月)
風薫る季節 光まぶしい季節
風光る季節
風光るという言葉が実感されるこの頃
そろそろ梅雨入りですね
梅雨の頃
紫陽花が美しいこの頃

七月(文月)
梅雨、早く終わってほしい季節
梅雨晴れの空の美しさ
もうじき七夕
白いシャツがまぶしいこの頃
朝顔市の季節
ほおずき市が立つ頃

八月(葉月)
万縁の候
蛍飛ぶ季節
涼風が恋しい季節
月見草咲く頃
向日葵が元気な季節
夏日が続きます

九月(長月)
残暑厳しい季節
名月の頃
露草が咲く季節
コスモス咲く頃
彼岸花が咲きました
暑さもあと一息
朝夕爽やかです
二百十日も過ぎて

十月(神無月)
新涼の候

光澄む季節
山装う季節
野菊咲く頃
虫すだく季節

十一月(霜月)
小春日が続きます
時雨の季節
冬めいてきました
山茶花が咲いて
銀杏も散って
落葉散る頃
七五三の季節
酉の市が立ち
コートがほしいこの頃

十二月(師走)
風花飛ぶ頃
木枯らしの季節
そろそろ初雪
寒椿が咲きました
冬本番ですね
山眠る季節
スキーシーズン到来
忘年会シーズン
クリスマスも近く

一月(睦月)
新年を迎え
寒中ですが
日脚が伸びて
七草の頃
冬桜が咲いたとか
そろそろ水仙のたより
初詣はどちらに?
門松も取れて
この季節、熱燗が嬉しい


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