江戸・東京を往来して探る 実用便利帳
江戸の便利帳【七】初春
「染料の名前の色」(冬)
文:三輪映子
今回は、染料の名前がそのまま色名とされた例を拾ってみました。
古くから染色に用いられたベニバナ、スオウ、アイなどはいずれも外来の植物。
美しく染めた着物を着たいという願いが、昔からどんなに強かったかわかります。

紅色(べにいろ)
ベニバナの花で染めた、あざやかな赤。紅(くれない)も同じ。
ベニバナは小アジア・エジプト原産、キク科の二年草。呉国(中国)を経由して 伝来した染料なので「呉(くれ)の藍」と呼ばれ、転じて「くれない」となった。


茜色(あかねいろ)
アカネの根から取った染料で染めた、やや沈んだ赤。アカネはアカネ科の多年草。
日本の山野に自生し、古代から染料として用いられた。


蘇芳(すおう)
スオウはインド・マレー原産、マメ科の小潅木。その木部を削って染料を取る。
灰汁で媒染したとき、渋い赤に発色する。古くは紫に次いで高貴な色とされた。


茶色(ちゃいろ)
お茶は飲むだけでなく、染料にもなる。茶染の色は暗い黄赤。江戸時代、 茶を基調とした色が大流行し、「〜茶」と名づけられた色名は、 「四十八茶」という言葉があるほど種類が多く、その色調は、赤みの茶や黄みの茶から、 緑をおびた茶まで非常に幅が広い。チャはツバキ科の常緑潅木、原産地は東南アジアの温帯・熱帯。


鬱金(うこん)
ウコンの根茎で染めた、濃い鮮黄色。ウコンはショウガ科の多年草、 熱帯アジア原産。根茎はショウガに似て、最近は健康食品として注目されている。


梔子(くちなし)
クチナシの実で染めた、赤みを帯びた黄色。クチナシはアカネ科の常緑潅木。


藍色(あいいろ)
くすんだ青。アイはタデ科の一年草で、その葉や茎を用いる。 古く中国からもたらされ、江戸時代には四国などで広く栽培された。 布を藍瓶に漬ける回数によって、淡い「瓶覗」から深い「紺」まで、濃淡さまざまの青を得る。


※掲載の色はイメージです。

●実用便利張《東京の花の名所》2〜3月

気温はまだ冬だけれど光は春の眩しさ。ようやく延びはじめた日脚を感じとって、 いち早く咲きだす花がウメ。花の気品、香気のすがすがしさ。冬ごもりしていた心を解き放ってくれる花です。

【ウメ】羽根木公園 2月上旬〜3月中旬
65種類のウメを植え、都内屈指のウメの名所。一本の木から紅白の花が咲くなど、珍しい品種も。 「せたがや梅まつり」の期間には野点のサービスがある。
所在地=世田谷区代田4-38-52/羽根木公園管理事務所=TEL 03-3322-1184

【ウメ】池上梅園 2月中旬〜3月上旬
池上本門寺の隣。手入れのゆきとどいた日本庭園。シダレウメと見晴台からの眺めが特徴。
所在地=大田区池上2-2-13/池上梅園管理事務所=TEL 03-3753-1658

【ウメ】湯島天神社 2月上旬〜3月上旬
菅原道真が神様になって「天神様」。道真は梅をこよなく愛したので、天神様を祭った神社には ウメを植えるのが慣わし。ここは白梅が多く「湯島の白梅」として知られる。学問の神様なので、合格祈願を兼ねて訪ねる人も多い。
所在地=文京区湯島3-30-1/湯島天神社=TEL 03-3836-0753

【ウメ】神代植物公園  2月中旬〜3月中旬
広大な園内のもっとも奥に、72種、220本のウメ。ツバキ・マンサク・サンシュユも花時を迎える。 早春の花をいろいろ見られるのは、植物園ならではの楽しみ。
所在地=調布市深大寺元町5-31-10/神代植物公園管理事務所=TEL 0424-83-2300

【ウメ】京王百草園 2月中旬〜3月下旬
多摩丘陵の起伏の多い地形を生かした、風雅なおもむきの 本庭園。萱葺屋根の茶屋では甘酒や蕎麦を楽しめる。
所在地=日野市百草560/京王百草園=TEL 042-591-3478

【ウメ】吉野梅郷 2月中旬〜3月中旬
ここ一帯の地名を「青梅」というほど、古くからウメの栽培が盛ん。その中心が梅郷地区で、 梅畑や民家の庭に2万5000本の梅。「梅の公園」では120種の梅が咲く。なお青梅市内の、明白院、金剛寺、大聖院も、ウメの名所として知られる。
所在地=青梅市梅郷4丁目/青梅市観光協会=TEL 0428-24-3400

【温室】夢の島熱帯植物館 1年中珍しい花が楽しめる。
三つのドームからなる大温室に、約千種類の熱帯・亜熱帯植物を収集している。
Aドームは熱帯の水辺の植物。木生シダやパピルス、オオオニバスなど。
Bドームは熱帯の人里。コーヒー・果物などの作物や、色あざやかな花々。
Cドームには小笠原諸島の植物を集め、東京都の特色を出している。
所在地=江東区夢の島3-2/夢の島熱帯植物館管理事務所=TEL 03-3522-0281〜2

【温室】新宿御苑 1〜3月は洋ランの花が見頃
大温室は、亜熱帯植物室・ヤシ室・花木室・熱帯スイレン室・ラン室の5室に分かれ、それぞれの室の景観に バラエティーがあって楽しい。冬はランの花どき。ラン室では、カトレアやデンドロビュームが咲き誇る。
所在地=新宿区内藤町11/新宿御苑=TEL 03-3350-0151

【温室】神代植物園
熱帯の花木室・熱帯スイレン室・ベゴニア室からなる大温室に、約650種の植物。大温室の前のバラ園では、 寒さに耐えてバラが咲いている。
所在地=調布市深大寺元町5-31-10/神代植物公園管理事務所=TEL 0424-83-2300

【温室】東京都薬用植物園
温室には、アロエ・ニッケイ・チョウジ・カカオ・コーヒーなど、薬草や薬木、香料や香辛料のもとになる植 物を集めている。涼しい気候を好む植物のため、「冷室」もある。
所在地=小平市中島町21-1/東京都薬用植物園=TEL 042-341-0344

【温室】熱帯環境植物館
板橋清掃工場で発生する熱を利用した温室。特徴はミニ水族館と冷室を併設していることで、 海中の生物から、低地の熱帯雨林、1500~2700mの山岳地帯の植物と、東南アジアの自然を一続きに見ることができる。
所在地=板橋区高島平8-29-2/熱帯環境植物館=TEL 03-5920-1131

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