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リゴレット(Rigoletto) |
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第一幕第一場 《公爵の館の広間》 |
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女好きのマントヴァ公爵は次々と恋の冒険を繰り返す毎日。今日も、新しく目を付けた町外れに住む美しい娘のことを話しています。しかし今は舞踏会の最中。すぐ美しい貴婦人に目を奪われます。大胆な公爵は、夫の目の前で夫人を口説くことも平気です。その上腰巾着の道化師リゴレットが毒舌をふりまき、廷臣たちを思うままからかいます。腹は立つものの後ろ盾の公爵が怖い彼らは、いつもその怒りを押しとどめているのです。 |
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しかし今日はとんでもないニュースが飛び込んできました。せむしで醜いリゴレットに愛人がいるというのです。廷臣たちはこの女をさらって公爵に捧げることで、リゴレットへの日頃の恨みを晴らそうと密かに計画を練ります。
やがて宴もたけなわという頃、突然一人の老貴族がその賑わいをさえぎって入ってきます。彼の名はモンテローネ伯爵。娘を公爵に辱められた怒りをぶつけにきたのです。彼を皮肉な調子で嘲り笑うリゴレット。モンテローネの怒りはついに爆発します。 |
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「娘を思う父親の苦悩を笑うものは呪われよ!」公爵はこれを笑い飛ばしますが、リゴレットは恐怖に身をすくませます。
一同は、宴を乱したモンテローネに怒りの声を上げ、彼は捕らえられて獄へと引かれていくのでした。 |
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第一幕第二場
《町の外れにあるリゴレットの家の近く》 |
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宮廷での務めを終え家路についたリゴレットですが、さっきのモンテローネの呪いの言葉が耳について離れません。それというのも彼の家にいる美しい娘とは、愛人などではなくたった一人の大切な娘だったからです。
その時彼の前に、殺し屋のスパラフチーレが現れ、役に立とうかともちかけます。リゴレットは殺しの仕事のルールを尋ねた上で、今はまだ必要ないと彼を帰らせます。一人になったリゴレットは、自分も舌で人を刺す殺し屋のようなものだ、と道化師としてしか生きられない自分の運命を嘆くのでした。 |
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しかし暗い思いを振り切って家の門をくぐれば、そこには彼の唯一の宝である娘ジルダの姿が・・・。彼女と過ごすわずかな時間だけが、故郷も捨て、他に身寄りもないリゴレットにとって安らぎなのです。ジルダはリゴレットの名前も、仕事も、そして母親が誰なのかも知らされていません。また、あらゆる危険からその身を守るため、教会へ行く以外は外出することも許されていないのです。リゴレットは娘を、決して汚されることのないように、密かに、そして大切に育ててきたのです。 |
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その時外から物音がし、不審に思ったリゴレットが様子を見に出ていくと、入れ違いに学生に変装したマントヴァ公爵が入ってきます。彼が目を付けていた娘とはジルダのことだったのです。彼は侍女を金袋で買収して木の陰に隠れます。戻ってきたリゴレットは、侍女に決して誰もこの家に入れないことを命じ、さらにジルダの身の安全を託して再び出かけていくのでした。 |
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父親と別れたジルダは、教会で出会った美しい青年のことに思いを馳せます。その目の前にまさにその青年である公爵が現れ、甘い愛の言葉を浴びせます。驚きつつも次第にその言葉に酔っていくジルダ。しかしそこに人の気配がするので、二人は慌ただしく愛を確かめ合い、別れを告げるのです。
ひとり残されたジルダは、公爵が残していった“グァルティエル・マルデ”という彼の名をつぶやき、死の瞬間まであなたを愛すると愛の喜びに浸ります(アリア「慕わしき御名」)。 |
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さて、リゴレットの愛人を略奪せんと集まった廷臣たちのところへ、胸騒ぎを覚えたリゴレットが戻ってきます。廷臣たちは、近くに住む貴族の奥方をさらうのだと彼を仲間に引き入れます。哀れ覆面によって目と耳をふさがれたリゴレットは、そうとは知らずに自分の娘の誘拐に加担してしまうのでした。彼が事の真相に気付いたときには既にジルダは連れ去られた後。モンテローネの呪いの言葉を思い出しながら、彼は絶望に身を震わせるのでした。 |
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