江戸・東京を往来して探る 実用便利帳
江戸の便利帳【参】
「花の色」(夏)
文:三輪映子
歌麻呂が描いた浮世絵を見てもわかるように、江戸の人々はとてもおしゃれ。江戸で好まれた色彩には「江戸紫」のように目立つ色もありましたが、どちらかといえば、茶系統や灰色系統。渋さのなかの微妙な色合いに凝ったようです。江戸の流行色のうち、茶系統では、「江戸茶」をはじめ、人気役者の名を冠した「芝翫茶」「団十郎茶」「路考茶」。灰色系統では、「銀鼠」「梅鼠」「深川鼠」「藍鼠」「錆鼠」などが知られています。
そうはいっても、昔も今も、若い女性が好むのは、やはり明るい色や華やかな色。そんな色の感じを的確に表現するには、花や木の実など、自然現象を借りるのが早道。昔から伝えられた色の名で、植物の色になぞらえたものを拾ってみました。

牡丹色(ぼたんいろ)
ボタンの花のような、冴えた赤紫。圧倒的に目立つ色。


撫子色(なでしこいろ)
その名もやさしげ。ナデシコの花のような淡い赤紫。


山吹色(やまぶきいろ)
山吹の花を思わせる、豊かな黄色。ご存じ、「山吹色の小判」というように、黄金の形容。


橙色(だいだいいろ)
ダイダイの実の色。最近はミカン色やオレンジ色という言葉に押され気味。


萌木色(もえぎいろ)
木や草の芽の色。よくある黄緑だけれど、「もえぎ」という言葉の美しさを愛でたい。


柳色(やなぎいろ)
柳の葉のような、ちょっとくすんだ緑。粋な感覚の色。


露草色(つゆくさいろ)
すっきりした青紫。古代、この花を衣にすりつけて染めたので、この名がある。


菖蒲色(あやめいろ)
アヤメやカキツバタのような、青っぽい紫。華やかさのある色。


※掲載の色はイメージです。

●実用便利帳《東京の花の名所》

東京砂漠なんて、東京をよく知らない人の言葉ではないかしら。交通至便な東京だからこそ、 こんなにたくさん、花の名所を楽しめます。

【ダリア】町田ダリア園 7月上旬〜10月下旬
500種品種を栽培。花の形のバラエティーが楽しい。
所在地=町田市山崎町1213-1 /町田ダリア園:042-722-0538

【ハス】不忍池 7月下旬〜8月下旬
広大な池を埋めつくすハスの花は圧巻。正午には花が閉じるので、鑑賞は午前中に。
所在地=台東区上野公園 /上野恩賜公園管理事務所:03-3828-5644

【ハス】水産試験場跡地 7月中旬〜8月下旬
珍しいのは、東京都の天然記念物、オニバスの池。
所在地=葛飾区水元公園1-1/水産試験場跡地分室:03-3600-2872

【ハス】薬師池公園 7月下旬〜8月下旬
薬師池は新東京百景の一つ。古代から甦った「大賀ハス」を植えている。
所在地=町田市野津田3270/薬師池公園管理事務所:042-734-8527

【ハス】圓林寺 7月中旬〜8月中旬
地元の人から「ハス寺」と呼ばれ、30種のハスを集めている。
所在地=町田市相原町3729/圓林寺:042-782-2243

【ヒマワリ】野津田見本園 8月中旬
八重咲きのヒマワリが周囲の緑と調和して、絵のような眺め。
所在地=町田市野津田/ 町田市農政課:042-724-2169

【サルスベリ】代々木公園 7月中旬〜8月下旬
54万uの広々とした緑の中、サルスベリの大木が群落をなし、見事。
所在地=渋谷区代々木神園町2-1/代々木公園管理事務所:03-3469-6081

【サルスベリ】小石川植物園 7月中旬〜8月下旬
日本最古の歴史をもつ小石川植物園。紅、紫、白のサルスベリが見られる。
所在地=文京区白山3-7-1/小石川植物園:03-3814-0138

【白ハギ】大悲願寺 9月上旬〜下旬
古刹らしいたたずまいの境内いっぱいに、白ハギが咲く。
所在地=あきる野市五日市町134/大悲願寺: 0425-96-0141

【ハギ】向島百花園 9月上旬〜下旬
30メートルもあるハギのトンネルは有名。トンネルを楽しむなら9月中旬に。
所在地=墨田区東向島3-18-3/向島百花園:03-3611-8705

【ヒガンバナ】宝蔵院 9月中旬〜下旬
宝蔵院は室町時代の創建。ヒガンバナは赤のほか、珍しい黄花や白花もある。
所在地=葛飾区奥戸8-5-19/宝蔵院:03-3696-0173

【ヒガンバナ】皇居内堀 9月中旬
お濠を前景に、皇居の緑を背景にしたヒガンバナの群落は、贅沢な眺め。
所在地=千代田区千代田/宮内庁:03-3213-1111

※2000年8月現在

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