江戸のおもしろグッズ【7】東京都伝統工芸士 原島秀夫氏「原島の羽子板」を訪ねて
手作りのリースに押し絵の羽子板を
 これまでの6回、気がつけば、どれも「使う」視点で書いてきました。で、今度は角度を変え、「飾る」を考えたいと思います。伝統の工芸を作り続けている職人さんを訪ね、その心意気をうかがいながら、お江戸の美学をさぐります。そして、現代にお江戸をどう生かすか。自分流に遊んだり、ちょっぴり冒険も試みたい。
文・絵 三輪映子
羽子板イラスト

羽子板
結婚祝い、新築祝いなど
立体感のある作品がユニークな
オリジナル商品として押絵は喜ばれています。

 路地の奥の玄関からいきなり階段。上がりきった三畳ばかりの部屋が、原島秀夫さんの仕事場だった。奥さんがちゃぶ台を持って上がってきて、お茶とぬかみそ漬けの小蕪をすすめるといった具合で、住まいイコール工房の典型。店舗は持たず、羽子板市や百貨店の催し物、インターネットで販売しているという。「羽子板の中でも、僕の仕事は押し絵。昔は元図、押し絵、顔を描くなど、別々の職人がいたもんだけど、今はいなくなっちゃったから、僕が元図も描いている。顔を描くのは息子です。息子は子供のときから勘定流の字なんか習ってね、今は歌舞伎俳優。澤村光紀っていう」と、話しながらも手の方はどんどん仕事している。作っているのは、来年の正月向けに、縁起のいい「三番叟」。20センチと小ぶりな羽子板だけれど迫力があるのは、顔のよさだと思う。描き手が本業の歌舞伎俳優だけのことはあり、表情が生きている。だだの器用が描いた絵とちがう。
伝統工芸士押し絵の羽子板は遊び道具ではなくて、飾り物。コレクターもいるけれど、多くは、新築祝いや結婚祝いの贈り物として買われるそうな。そういえば私も七五三のとき、「娘道成寺」の羽子板をいただいたっけ…。さて、この「三番叟」、気軽に買える値段でもあるし、家に一つあってもいいな。我が家はマンションで床の間がないか、お正月には、手作りのリースを壁に飾るのがならわし。そう、2000年のお正月用に、原島さんの「三番叟」と紅白の水引を組み合わせ、豪華なリースを作ってみようか。
東京都伝統工芸士 台東区指定 無形文化財認定
原島秀夫氏
原島の羽子板

前ページ / 次ページ


| 江戸最新情報 | 江戸の商い | 江戸おもしろグッズ | かわら版 | TVZ表紙 |